Leverages データ戦略ブログ

インハウスデータ組織のあたまのなか

Web広告の配荷率モニタリングを楽にするツール

はじめに

こんにちは。データ戦略室データエンジニアリンググループの森下です。
今回は広告運用チームより依頼を受けて実装したツールについてご紹介します。

ツールの目的

先日、広告運用チームより、アフィリエイト広告の運用を効率化するためのツールを開発して欲しいという要望を受けました。

広告運用チームが意識している指標は大きく分けて2種類あります。1つはいわゆる広告KPI (CV, Click, impression, CTR, CPA 等々)、もう1つは配荷率です。
今回は後者の、配荷率モニタリング体制構築に関する依頼です。ちなみに、広告KPIのモニタリング体制構築も広告運用チームとデータ戦略室でやってきたのですが、それはまた機会があれば別の記事で書くかもしれません。

配荷率とは、もともと、「特定の市場範囲において、自分たちの製品が店頭に並んでいる割合」を占めるマーケティング用語です。つまり「自分たちの商品が購入検討されたときにどれぐらい物理的に手に届きやすいか」という概念を表したものです。
デジタルマーケティングにおいても似たような概念を当てはめることができます。デジタルマーケティングにおける配荷率は、「特定のニーズ (=検索クエリ) を持った人に対して、いかに自社サービスに関する情報が物理的に手の届く範囲に並べられているか (検索結果画面に載っているか)」という概念として定義できます。広告運用チームは配荷率をより向上させられるようにクロスチャネルでのマーケティングを意識しているわけです。

配荷率のモニタリングは人力でもやろうと思えば可能ですが、かなりの工数がかかります。例えば、自社サービスのペルソナを想定して検索しそうなキーワードでインターネット検索し、結果画面を人力で確認し自社サービスに関連する情報が載っているかどうかを定期的にデータとして記録・蓄積していく、といった方法になります。
やろうと思えば人力でも可能ですが、あまり現実的ではありません。そこで、今回はこのようなモニタリングを効率的に実現するツールを開発しました。

ツール概要

ツールの簡単なアーキテクチャと仕組みは以下になります。

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ツールの動作に必要なサービス毎の検索キーワードは広告運用チームが設定します。そのため、ツールの中ではなく外から設定が出来るようにする必要がありました。また、ツールの出力先は Google SpreadSheet なので、インプットも合わせて Google SpreadSheet とします。

ツールが動作する環境ですが、データ戦略室で管理している分析用サーバー上で実行させています。インプットされる検索キーワードの数次第ですが、ツールの動作自体は数分〜十数分で終了します。そのため、最初は Google Cloud Functinos を使うつもりでした。しかし、メモリ設定を最大の8GB、タイムアウト設定を最大の9分に設定しても、時間内に実行が完了しませんでした。Cloud Run を使用するということも考えましたが、追加課金も発生しないため、最終的にはチームで管理しているサーバー上で実行させることにしました。
いつかは Cloud Run や Cloud Functions 上で実行させるようにしたいですが、定期実行の回数もそこまで頻繁ではないため、しばらくはサーバー上で実行させようと考えています。

広告運用チームとのコミュニケーションについて

今回のツール作成の発端が広告運用チームからの依頼であったように、実装まではいかなくても、「プログラミングやシステム開発で何ができそうか」を知っていることは、現場の課題解決に繋がります。また、そういった知識を持つ現場の方であったからこそ、要件定義もスムーズに行うことができ、中間レビューの際にも、やりたいことを実現しつつツール開発として楽な方向に修正ができたと思います。現場の担当者とエンジニアは職種内容の違いからどうしても距離が生まれてしまいますが、お互いの歩み寄りがあると解決できる課題が非常に多くなると実感しました。

おわりに

今回のツールが行っている処理を単純化すると、以下になります。

  • インプットされた検索キーワードでインターネット検索を行う
  • 検索結果を取得、HTML内を条件に従ってチェックする
  • チェックした結果を Google SpreadSheet に反映する

技術的に難易度が高いことはしていませんが、広告運用チームの運用工数を削減はできています。このように、「エンジニア的には実装難易度は高くない」が「現場の課題を解決できること」はたくさんあるように感じています。ただ、このような事例の背景には、「エンジニアリングを理解している現場」と「現場を理解しているエンジニア」の双方の存在があります。

今後もエンジニアリングの力を使って現場の課題解決を行った事例について、このブログでご紹介しようと考えています。今回の記事が、誰かの課題解決に役立てば幸いです。