はじめに
はじめまして。
レバレジーズ データ戦略室、データアーキテクトの川村です。
2024年4月に営業から社内異動して半年ほど経ちました。
データアーキテクトに関する仕事は、こちらの記事で紹介されている通り
データ利用者が分析を行う際に使用するデータセット設計を行っています。
そんな私は営業時代に、3ヶ月かけてモニタリングツールを作り上げたことがあります。
現場の意見を反映しようと、10回以上もミーティングを重ね、
関係者からは「素晴らしい出来だ」と高く評価されていました。
ところが、いざ公開してみると、全くと言っていいほど使われない。
あれだけ時間と労力をかけたにも関わらず、
すぐにお蔵入りになってしまったのです。一体なぜ…?
今回は事業部向けにモニタリング環境の提供を行ってきたなかで、
利用され続けるものについて発見した学びを紹介していきます。
使われないもの=損失であるという自覚を持つこと
心血を注いで作成したものが利用されていないと知った際にどう感じますか。
自分は、自戒を込めて損失を生み出したと悔いるようにしています。
損失について複数例を挙げます。
・金銭的コストが発生する
モニタリング環境に従量課金制のサービスを利用している場合、
停止が遅れるほどコストを継続して垂れ流していることになります。
・品質やパフォーマンスの低下
モニタリングはシステムやプロセスの品質管理やパフォーマンスの維持に役立ちます。
使われなくなると、品質やパフォーマンスの低下に気づかず、
結果的にビジネスや顧客体験に悪影響を及ぼす可能性があります。
・時間とリソースの浪費
モニタリングの設計・開発・運用には時間や労力、コストがかかっています。
使われなくなると、これらのリソースが無駄になることになります。
同じ悩みを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
どうすれば使われ続けるモニタリングが作り上げられるのか。
下記に記載する内容が少しでも役立てばと思います。
モニタリングが機能し続けた理由
過去から現在にかけて使われ続けたモニタリングに共通して気づいたことを記載します。
なぜ使われ続けているのか。裏を返すと使わざる得ないのかを2つ定義付けました。
1.KPI数値の悪化が事業損失に繋がるという共通認識
2.明確なレポートラインの存在
1.「KPI数値の悪化が事業損失に繋がるという共通認識」について
モニタリングを行う際には、日々の細かな数値の変化を見逃さないことが重要です。
特定のKPIが悪化することでどのようなリスクが生じるのかを、
関係者間で共通認識として持つことが、モニタリングの重要性を高めると感じます。
数字が悪化することが事業リスクに繋がることが明確でないKPIは、
そもそも話の論点に上がらないことが多いため、
モニタリング項目に含めるべきかどうかについて議論を行うことが大切です。
2.「明確なレポートラインの存在」について
モニタリングしている数値の責任者が明確で、報告経路が整備されていることも重要です。
報告者が不明確な場合、数値管理が疎かになる傾向があります。
また、報告フォーマットがモニタリングの内容に適合していることも重要です。
適切な報告フォーマットは、注力すべき指標に対する振り返りを容易にし、
モニタリングの継続的な利用を促進すると感じました。
現場とのコミュニケーションの取り方
モニタリングの質と、その未来は自分が担保しなければならない。
その強い責任感を持つ一方で、強い言葉で関係者を説得するコミュニケーションは
正直、得意ではありません。
そこで疑問形を効果的に使いながら、 関係者の意識を自然とモニタリングの重要性へと導くように心がけています。
例えば
「この数字が下がると、事業にどんな影響があるのでしょうか?」
「不用意に項目を増やすと、モニタリングが形骸化する可能性があるので、
本当に必要なものに絞りたいのですが、いかがでしょうか?」
「この指標って、どのタイミングで、誰が報告するのでしょうか?」
「報告のフォーマットをあらかじめ決めておいた方が、より質の高い報告につながるかもしれませんね」
といった具合です。
是非、実践してみて下さい!
今まで作ってきたもの紹介
簡単になりますが、自分が作ったものを紹介して終わります。
・経営層向け:事業数値モニタリングシート
顧客獲得から受注までに時間がかかるビジネスモデルの事業部向けに作成しました。
顧客が次のステップにどれだけ進んでいるかを、過去のデータと比較できます。
前年同時期の顧客の進捗状況を把握することで、事業の運営状況をリアルタイムで把握することが可能になりました。
工夫した点:
リスクの洗い出しとモニタリング項目の紐付けを行いました。
リードタイムが長いビジネスモデルにおいては顧客の進捗状況を可視化をしないと、
事業が健全に運営されているかわからないことをリスクと定義づけました。
レポートライン:事業部長 → 社長
・現場リーダー向け:チーム数字モニタリングシート
各チームで進捗状況や課題認識が統一されていなかったため、
経過営業日ごとに各KPIが期待される進捗率に対して上振れしているか、
下振れしているかを可視化できる仕組みを導入しました。
工夫した点:
悪化しているKPI数値を赤色で色付けすることで、各チームの運営状況を瞬時に可視化できるようにしました。
モニタリングに沿った報告フォーマットの作成に協力し、報告の場に同席することでモニタリング項目から読み取れる各チームの運営状況の報告の補足を行いました。
レポートライン:現場リーダー → チームリーダー・事業部長
まとめ
この記事では、過去の失敗から学んだ教訓について記載しました。
どうすればモニタリングが活用されて課題解決に繋がるかを考えながら、
これまでに使われないモニタリングツールを作成し後悔を重ねてきました。
モニタリングの利用目的や要件のすり合わせはもちろん重要ですが、
上記で述べたような観点も、少なからず影響しているのかもしれません。
以上、参考になれば幸いです。